住宅メーカー、働く母親目線で家づくり 家事シェア、住み心地に特化
家族全員で作業ができたり子供を見守れたりする開放型キッチン、手洗いを習慣化させる洗面台がある玄関、自分の荷物を自分で管理する専用ロッカー-。女性活躍推進が叫ばれる中、住宅メーカーが、働く母親が時間的にも精神的にも楽に暮らせる家づくりに注力している。家事負担の軽減に向け、母親目線で「いいな」と思ったアイデアを取り入れ、夫や子供が参加しやすい間取りや設備を提案する。家事、子育て、仕事を抱えて頑張る主婦を応援する住まいは家族の会話を弾ませ、豊かな暮らしをもたらすと考えるからだ。
人気のモデルハウス
「8月のお盆に(静岡県袋井市の)展示場に来たお客さまのうち10組ほどからモデルハウス(分譲予定の1棟)が欲しいといわれた」
家事と家計に優しい「住みごこちのいい家」を提案するアキュラホーム(東京都新宿区)の浜松支店兼名古屋支店の広報販促担当、高橋奈美さんは目を細めた。人気を集めたのは、浜松支店の女性スタッフが母親目線で「家事ラク」アイデアを出し合ったモデルハウス「ママ・クチュール」だ。
今年4月に購入した伊藤隆さんは「キッチンからすべてが見える配置や玄関の手洗いコーナー、子供が必ずリビングを通る間取りなどが気に入った」とほほ笑む。キッチンから子供の動きを把握できる安心感や、健康習慣が自然と身につく工夫が楽な家事につながっているという。
アキュラホームは2014年に、「住みごこちのいい家」を発売。この一環として浜松支店は独自に、「家事を楽して自分や家族と過ごす時間がほしい母親に住み心地で応援したい」(高橋さん)と15年春にママ・クチュールの販売を始めた。
同社商品開発部の細淵直樹部長は「住宅メーカーはこれまで顧客の声に耳を貸さず供給者論理で提供してきた」と指摘。その上で「省エネや耐震性といった性能や価格では他社に勝てない。そこで住み心地というソフトに特化した」と強調する。
こうした考えは業界に浸透、家事動線や収納を意識した家づくりに乗り出した。しかし動線の短縮は限界に来ている。アキュラホーム住生活研究所の調査によると、キッチンと洗面所間を歩いた距離は年平均で09年の5.72メートルから15年は3.63メートルまで短縮。しかし16年には3.92メートルと前年比0.3メートル伸びた。
収納も「昔の『あればいい』から適材適所に変わってきた」(細淵氏)。シューズクロークの設置率が09年の35%から16年は74%に上昇したのはその表れ。靴はもちろん、傘やゴルフバッグ、子供の遊び道具などを収納できる便利な空間として認識されてきたためだ。不意の来客にもきれいな玄関を見せられると好評だ。
大和ハウス工業が提案するのは「家事シェアハウス」。母親目線で家事負担を軽減する工夫やアイデアが盛り込まれた戸建て住宅で、キーワードは文字通り「シェア」。夫婦間で家事分担は進んでいるものの、男性は自分の担当をこなせば満足。割り振られていない細かな家事は女性が担うことになるため、女性の家事負担は大きい。こうした不満を解消するため家族それぞれの荷物を各自が管理する「自分専用カタヅケロッカー」を玄関に設置。またダイニングテーブルに置いたり、冷蔵庫に貼ったりしているダイレクトメールやちらしなどを収納する「お便り紙蔵庫」を開発。家族全員が確認でき、来客の場合は扉を閉めて隠すことができる。
家事を効率的に行う動線と7アイテムを用意し、今年1月から全国展開。これまでに建売住宅41棟が売れた。このうち35棟が、7月15~17日に開催された「家事シェアハウス全国一斉見学会」の成果だ。担当者は「東京・新宿の見学会では圧倒的に多くの来場者が家事シェアハウスをみて『このまま建てたい』といい、実際に売れた。メガヒット商品」という。広さや間取り、駅の近くといった購入条件に家事シェアが加わった。
夫婦で家事シェア
旭化成ホームズ(東京都新宿区)も家事シェアを呼びかける。「家事の合理化・省力化は限界にきている。夫婦でシェアでき、子供も手伝いやすい空間提案が必要」と同社共働き家族研究所の木戸將人所長は指摘する。
その一つが「マルチアイランドキッチン」。回遊できるアイランド型のオープンなシンク部分と、食器棚機能を兼ねるコンロ部分を分離。さらにシンクとコンロの位置をずらすことで夫婦または子供も一緒に作業できる家事シェアを実現した。
14年から標準仕様として売り出したが、キッチンの面積を変えずに料理から洗い物、片付けまでシェアしやすい設計が評判となり、出荷は年々増加。年間販売目標は250台だが、16年に300台を突破、「17年も300台は堅い」(木戸氏)と好調だ。
洗濯も家事シェアを促す。洗う、干す、取り込む、たたむの一連の作業を1カ所でできる「ランドリーサンルーム」を商品化。室内に設けるため天候や時間を気にせず、しかもぬれた洗濯物をベランダまで運ばなくていい。室内干しなので花粉やウイルス、PM2.5などの大気汚染の心配もなく、家族の健康管理に役立つ。
「共働きが多くなり、価格より住み心地などを評価して住宅購入を決める世帯が増えている」とアキュラホームの宮沢俊哉社長は指摘する。母親の家事を楽にして豊かな暮らしを実現する提案に住宅メーカーは今後も知恵を絞る。
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