神鋼、「鉄粉」や子会社でも改ざん 不動産子会社売却へ 川崎社長が12日に経産省訪問
神戸製鋼所は11日、顧客と約束した仕様を満たさない鉄粉製品について、検査データを書き換えて出荷していたと発表した。さらに子会社のコベルコ科研(神戸市)が手掛ける製品でも検査データを書き換えていた。アルミや銅製品のほかにもグループでデータ改ざんが広がっていたことで、さらなる信用低下は必至だ。
改ざん問題で追加費用が生じる可能性にも備え、神鋼は子会社である神鋼不動産(神戸市)の株式を売却する方針だ。
鉄粉は焼き固めるなどして部品を造るのが一般的で、自動車や機械などに幅広く使われている。神鋼によると、改ざんが確認されたのは、同社高砂製作所が製造拠点となっている粉末冶金用の鉄粉製品。同社は「今回の規格外れ品は高品位側の製品になるため、性能への影響は少ないと考えている」と説明している。
また、コベルコ科研の高砂事業所が製造拠点となっている金属薄膜のターゲット材の検査データも書き換えられていた。出荷先は70社に及んでいる。
神鋼では今回判明したデータ改ざんを含めて法律事務所が調査を行っており、調査が完了次第、結果を報告するとしている。
経済産業省は11日、神鋼の川崎博也会長兼社長が12日午前に経産省を訪問すると発表した。改ざん問題の経緯を報告するとみられる。
問題の判明したアルミ製品などの供給先は、トヨタ自動車や日産自動車など自動車大手や鉄道といった運輸業界のほか、航空宇宙、防衛産業を含む約200社に上る。自動車のリコール(回収・無償修理)などに発展すれば、神鋼が多額の費用を請求される可能性が出ている。
神鋼は原材料高や中国事業での損失などが負担となり、2017年3月期の連結最終損益は2年連続の赤字となっている。
今期は350億円の黒字を見込んでおり、現時点では巨額の特別損失を計上する可能性は低いものの、同社は神鋼不動産の売却で黒字転換に向けた財務基盤の強化を図る考えだ。
ただ、大規模リコールの恐れに加え、産業界には不正の拡大を不安視する声が広がっており、ブランド失墜に伴う信用低下リスクも懸念される。
今後改ざん問題が拡大し収益力が悪化すれば、神鋼不動産以外の資産売却を迫られる可能性もある。
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