3メガバンク計3.2万分業務“大リストラ”&店舗縮小、一斉表面化のワケ
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGの3メガバンクが店舗削減や人員スリム化など国内業務の大規模な構造改革(リストラクチャリング)に乗り出す。日銀の金融緩和による低金利や人口減少で経営環境が悪化する中、費用を大幅に見直して収益力を高めるのが狙い。3メガが削減する業務量は、単純合算で計3万2000人分にも及ぶ。3メガの大規模リストラの動きがこのタイミングで一斉に表面化したワケは…。
「地方銀行を中心に金融機関の店舗や従業員の数が多すぎることが収益力低下につながっている」。日銀は10月23日に発表した金融システムリポートで、こう分析した。
直接的には地銀への言及だが、3メガも同じ課題を共有しており、既にそれぞれの経営陣が数年前から現場に業務効率化を指示していた。日銀のリポートが公表されたのを受け、3メガが水面下で策定を進めてきた効率化の“たたき台”が一斉に報道された形だ。
現在、3メガの中で最も店舗数が多いのはみずほFGで、傘下のみずほ銀行の支店を中心に約800店を抱える。従業員は、契約社員なども含めれば約8万人。東京都内では「JR山手線の全ての駅前の一等地に支店がある」(幹部)状態で、渋谷にはATM(現金自動預払機)が30カ所あるという。
日銀の大規模金融緩和で「金余り」が続き、貸し出しは伸び悩んでいる。さらに、マイナス金利政策で金利は低く抑えられ、銀行の利ざや(貸出金利と預金金利の差)は縮小を余儀なくされている。その一方、「賃料と人件費を合わせた年間数億円の支店費用は変わらず、経費の比率は上がり続けている」(関係者)という。
パソコンやスマートフォンによるインターネットバンキングの普及で、窓口を訪れる人が減少する上、異業種から預金、送金、貸出業務への参入が相次ぎ、銀行の伝統的ビジネスモデルが脅かされている。
従来の人員を抱えたまま銀行業務を続ければ、「いずれ収益を確保できなくなる」との危機感が3メガを効率化へ駆り立てた。
これまで銀行の店舗では融資や投資の書類チェック、印鑑の真偽確認などは手作業だったが、IT技術の進化で不要となってきた。こうした面も効率化を後押ししている。
平成30年4月に新しい3カ年中期経営計画をスタートさせる三菱UFJ傘下の三菱東京UFJ銀行は、店舗改革などの具体策を作りつつある。三毛兼承(みけ・かねつぐ)頭取は「伝統的な銀行のビジネスモデルは構造不況化している」と懸念する。
今後、銀行の店舗はどう変わるのか。
3メガとも、老後資金の運用や遺産相続などを指南する「コンサルティング型店舗」を拡充。その上で、地価の高い駅前から需要の見込める住宅街に支店を移すなどして、コスト削減を進める計画だ。
店舗面積を大幅に縮小する動きも進みそうだ。現在、各支店のフロアの7割を占めるのは、銀行員のバックオフィス(事務所)で、顧客対応のスペースは3割にとどまる。
3メガ内では「バックオフィスを効率化できれば、他社に貸して賃料収入を得られる」といった案も出ており、今後は小規模店舗が増えそうだ。
その“究極形”といえるのが無人店舗だ。「実際に店舗に誰もいない状態は不可能」(メガ関係者)だが、来店客が行員に相談したい場合は、基本的にモニター画面での遠隔対応を検討。店舗の人員は数人のみで、納税や振り込み、伝票などの確認は電子化されたデータを全国的に集約し、業務効率化を目指す。このほか、住宅ローンや投資信託の販売などに特化した店舗もあり得るという。
こうした店舗改革に加え、コールセンターや融資の情報分析など幅広い分野で人工知能(AI)を導入。金融とITを融合した金融サービス「フィンテック」を駆使し、国内業務の抜本改革に乗り出す。
三菱東京UFJ銀は、国内約480店舗の1~2割程度を削減、従業員数ベースでは9500人分に当たる業務量を減らす方向で検討に入った。みずほFGも約800店舗のうち20~30店を減らし、10年程度で約1万9000人分の業務合理化を検討。三井住友FGは約430店舗を維持するが規模を縮小。32年度までに4000人分の業務量を減らす方針を打ち出している。浮いた人員を都市部の支店を中心に投入し、収益力を取り戻す狙いだ。
希望退職の募集などはせず、バブル期の大量採用組の退職増と採用抑制で適正規模への調整を進める。
29年3月期に約5割が本業の貸し出しや手数料ビジネスで赤字に陥った地銀にも店舗合理化の波が押し寄せそうだ。「ただ、地域密着がモットーで顧客に寄り添う地銀が無人店舗ばかりになるのはおかしい」(関係者)との声もあり、地銀経営のかじ取りは、メガバンク以上に難しくなりそうだ。(飯田耕司)
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