「成型1分」の壁
炭素繊維の現在の市場規模は3万トン。風力発電の羽根などの一般産業用途が6割、ゴルフシャフトや釣りざおといったスポーツ向けが2割強、残りを航空機向けが占める。炭素繊維の事業規模は東レでも700億円弱にすぎないが、そこに自動車が加われば、収益の大幅アップも夢ではない。東レは「500万円クラスの自動車3000万台に1台あたり10キロの炭素繊維が採用された場合、現在の市場に匹敵する市場が生まれる」と予測する。
ただ、量産化には成型時間のさらなる短縮が必要だ。鉄と対等に勝負するには「1分の壁」を破らなければならない。「1分の壁」打開に向けて、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主体となり、東レや三菱レイヨンが参加して成型時間の短縮に取り組むなど、産官学の連携も強まっている。
炭素繊維をめぐっては、中国が潜在需要を見越し国を挙げ開発に力を入れている。炭素繊維は原糸の製造に独自のノウハウが要るなど技術的な参入障壁が高く、「日本メーカーの優位は当面は揺るがない」(みずほ証券の高橋弘彦シニアアナリスト)とみられる。しかし、中国も技術力をつけてきているだけに予断を許さない。(井田通人)