三菱UFJ信託が11年8月に始めた遺言信託「受取安心信託」は受託件数が12年3月末までに3000件を超え、「異例のペースで伸びている」という。好調の理由は、遺族への配慮。故人の金融口座は正規の相続人でも簡単に資金を引き出せないが、「葬儀費用や生活資金に困る」という声を取り込み、指定された受取人が一時金をすぐに受け取れるようにした。
3月には、遺言を託した本人が自分の余生の生活資金を定期的に受け取れる設定を備えた商品も追加した。
相対的に少ない資産でも、信託するケースは増えている。りそな銀行では、1件当たりの遺言信託の受託財産額は、例年なら2億円以下が全体の8割程度を占めるが、11年度は8割強に伸びた。同行プライベートバンキング室の小熊信義グループリーダーは「小口化が進んでいる」と分析。簡素なタイプなど商品の多様化を視野に入れる。
商品へのきっかけに
さまざまな手間がかかるものの、遺言信託の収益性は悪くない。三井住友信託銀行の場合、遺言書の保管には31万5000円の基本手数料に加え、毎年6300円が必要。遺言の執行には最低105万円の報酬額が生じ、相続額に応じて金額が変わる。また、遺言内容の変更には5万2500円の手数料を設定している。
さらに「他行にある資産を自行に集めるツール」(りそな)としての活用価値は大きい。個人の資産状況に加え、家族や仕事上の人間関係も踏まえた上で相談に応じるだけに、さまざまな金融商品を働きかけるきっかけになる。まさに「究極の資産コンサルティング」だ。