【ニッポン経済図鑑】東京ガス扇島工場 (2/3ページ)

2012.6.18 05:00

 複数のタンクを造るよりも工費を抑え、限られた用地を有効に使う。さらに周囲の景観に及ぼす影響も少なくする-。こうした複数の課題を同時に解決するため、東京ガスは80年代から大容量地下タンクの開発に取り組んできた。容量を大きくするほどタンクにかかる圧力は大きくなり、強度を増すために長期間の技術開発が必要だった。

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 ■「ドーム形」採用に技術者の葛藤も

 他工場で採用している一般的なタンクの形は、屋根が地上から盛り上がり、その分だけ容量も大きいドーム形。だが、扇島の1~3号は周囲の景観に溶け込ませるため、地下の容量を増やしてタンクを地中に閉じ込め、地面を平らにした。いわば地下タンクの進化型だ。

 4号の建設に当たり、プロジェクトグループに課せられたのは「2010年代後半に見込まれるガス需要の拡大を見据え、20万キロリットルより大きなタンクを造る」という指令だった。

 ◆安定供給を最優先に

 本来は敷地内にある1~3号のように、平面の進化型を採用したい。しかし、同じ工法で20万キロリットル超のタンクを造った経験はまだなく、新たな技術開発が必要だった。失敗すれば時間も費用も余計にかかる。

 技術者の美学とエネルギー企業の絶対的な義務ともいえる安定供給をはかりに掛け、堤さんたちは「今回は技術的なブレークスルー(革新的な解決策)なしで容量を増やそう」とドーム形に戻すことを決めた。平面形で25万キロリットルを造った場合と比べ工期は9カ月間短縮でき、その分だけ費用も浮いたという。