しかし、堺工場は大型パネル用で転用が難しく、結果的に過剰投資になった。パネルの自社生産など「自前主義」にこだわった結果に、奥田隆司社長も「限界があった」と認める。
液晶ばかりに経営資源を集中したことも裏目に出た。堺工場の稼働からわずか数年で、経営基盤を揺るがすまで事態は悪化した。
シャープが助けを求めたのが、台湾の鴻海グループだ。中国などに工場を置き、低コストを実現。受託製造に特化し、米アップルのスマホ「アイフォーン」や任天堂、ソニーのゲーム機なども生産する。
一代で同社を育てた郭台銘会長は、領土を急拡大したモンゴル帝国と重ね、地元メディアから「現代のチンギスハン」と呼ばれる。技術で世界をリードしてきた日本メーカーと、台頭する台湾メーカー。両社の提携交渉の行方は、国境を越えた新たな連携のあり方を占う試金石になる。(大柳聡庸)