「トイレで用を足している時間は、何も考えていない。この空白の時間を楽しい時間に変えることはできないだろうか」
「ゲーム市場が成長している時代だったら耳を貸す社員はいなかったかもしれない」と町田さんは振り返る。しかし、国内ゲーム市場は、少子化の影響などで、年々縮小する傾向にある。こうした事態に直面し、ゲーム業界は、これまでゲームを楽しむ場であった家庭やゲームセンター以外への新しい市場開拓を競っている。もちろん、セガにとっても、新市場の開拓につながるアイデアは何よりも貴重で、無駄にはしたくなかった。
上層部の目の色も違っていた。「バカバカしいけどやってみろ」。ゴーサインを受けた町田氏らは、計画の具体化に乗り出した。
販促ツールに期待
しかし、構想や計画の段階と違い、実際の開発作業は困難の連続だったという。今回のプロジェクトは、あくまでも新しい市場の開拓が命題であり、これまでのゲーム開発の発想では対応できないことは分かっていた。ゲームづくりのプロたちも「どうすれば、トイレにゲームを設置してくれるだろうか」と思案にくれる日が続いた。