日立製作所の原発事業の売上高【拡大】
原発関連事業で合計6000人の人員を抱える日立は「新設が難しいとなれば、別の分野に人員を振り向けるしかない」(中村豊明副社長)状況だっただけに、英社買収は嫌な流れを反転させる逆転打だった。
英国で最大6基の建設が決まれば、BWRのシェアの底上げに貢献するだけでなく、世界トップレベルにある技術の蓄積の場も得られる。現在、世界では54基の原発の新設計画が動いており、日立は英国に続き、他の国でも原発事業会社への出資を検討し、建設場所を確保する構えだ。
これに対して、国内ライバルメーカーは、いずれも原発の運営に対して慎重だ。三菱重工業の佃嘉章副社長は「非常に難しい挑戦」といい、運営事業への参入に否定的。東芝の幹部も「当社にも5、6の運営会社の買収案件が入っているが、出資する方向にない」と明かす。
原発を運営するには、40年に及ぶ保守管理業務があるうえ、事故などのリスクも伴う。スタンダード&プアーズの柴田宏樹主席アナリストは「経験のない海外での建設はスケジュール管理が想像以上に難しく、想定以上にコストが膨らむ可能性もある」という。日立の“賭け”の行方は、原発ビジネスや重電業界の勢力図を塗り替える衝撃力を持っている。(今井裕治)