実際、6500億円あった九電の内部留保も底をつきつつある。今年度には3650億円という記録的赤字が予想される九電だが、原発稼働ゼロが続けば頼みの内部留保もなくなり、2014年度には債務超過に陥るという現実が待っている。再値上げをせずに九電が経営を維持していく道は原発の再稼働しか残されていない。
合理化計画も限界に近い。新卒を減らし、社員の平均給与も年間200万円近く減らして人件費を400億円圧縮するなど、年間1100億円の合理化を進めているが、燃料費はその数倍規模で膨らんでいく。今年度末の有利子負債は2兆6400億円と膨大な水準となる。九電の経営はもはや瀕死(ひんし)の状態にある。
九電の値上げ発表の2日後の29日に福岡入りした野田佳彦首相は、市内中心部の天神で「30年には原発ゼロ」と力説したが、集まった聴衆の反応は鈍かった。自動車や半導体など製造業に依存する九州にとって、原発ゼロによる電力料金の値上げが経済を一気に疲弊させることは聴衆の方が理解しているのだろう。まして福岡は伝統的に自民党の地盤である。