自動車向けでは、海外メーカーも動き始めた。米ダウ・ケミカルは今年4月、フォード・モーターと炭素繊維を使った自動車部品の共同開発で合意したほか、ダウはトルコの繊維大手アクサと合弁で、10億ドル(約820億円)を投じて世界最大級の炭素繊維工場をトルコに建設し、低コスト化を目指している。
ノウハウ蓄積 追い上げる海外勢に対抗
それでも、海外メーカーの追い上げについては国内各社とも「そう簡単に追いつかれない」と口をそろえる。東レは1971年、帝人子会社の東邦テナックス(当時は東邦レーヨン)は74年、三菱レイヨンは83年にそれぞれ炭素繊維の生産を開始。30~40年の製造経験を持ち、「もうからなかったが日本勢だけが投資を続け、ようやく芽が出てきた」(三菱レイヨン)という製造ノウハウの蓄積があるからだ。
短期間での利益獲得を重視する欧米メーカーにはない「日本的経営だからこそ成長できた分野」(同)との自負がある。