フィルムカメラが主流だった時代、印象に強く残っている場面がある。国際会議に参加すると、前回の集まりの時に撮影した写真を封筒や紙に包んで配り歩くのはたいてい日本からの参加者であった。食事の光景などを久々に会った他国の人たちに「写真担当」のように渡していく。
丁寧で生真面目な振る舞いが感謝される一方、言葉による「コミュニケーション下手」を補うという側面があるとも思った。しかしデジタルカメラの普及は「配達」を不要にした。
カメラを巡る風景は大きく変化している。
先週、ミラノで開催されたカメラ業界の展示会を見学していて気になったことがある。来場者の男性比率が非常に高く、年齢層も上だ。あまりオシャレじゃない。黒く大きい一眼レフカメラを首から下げて歩いている彼らが、日系老舗メーカーのスタンドに引き寄せられていく。
ソーシャルメディアで画像を通じて「つながる」世界を見馴れていると、少々意外なシーンである。ここにイタリアの特徴があるのだろうか?と思い、富士フイルムイタリア社長の黒瀬隆明さんに聞いてみた。
「ありますね。イタリア人は中国人同様一眼レフ好きです。見かけが重視されます」
高級ブランド好きで見栄っ張りのイタリア人の性格がみてとれる。ただ大きなサイズが好きなのはイタリアだけでなく欧州の傾向だ。
「日本は高性能コンパクト機が支持されるのに対し、米国はシンプルさとコスパが歓迎され、欧州は多少大きくてもロングズーム機が好まれます。またコンパクトタイプでもよりズーム倍率の高いものが受けます」