しかし、扇風機のようなファンをエアコンに付ければ、本体は大きくならざるを得ない。また、音を抑える技術開発も大きな課題になった。扇風機を搭載したエアコンのデザインは何種類もできていくが、どれも一長一短があるように思われた。
杉山慎治第一技術部長は「コンパクト化と静音技術という壁を乗り越えない限り、ノクリアXの商品化は難しかった」と振り返る。最終的には、左右にファンを取り付けるデザインに収れんしていく。いかに静かに、小さくするか。そこからは技術陣の腕の見せ所となった。
デザイン部門とのやり取りの中で、新製品の青写真ができあがっていった。だが、ファンの小型化と静音化は、杉山氏らの試作の繰り返しにもかかわらず、解決の糸口がつかめないでいた。
そんなとき、あるアイデアが杉山氏らの頭に浮かぶ。「風向を変えるのにファン全体を動かすのではなく、ファンの中心を固定したまま、ファンモーターよりもはるかに軽い、風の出口の部分を駆動モーターで動かせばどうか」(杉山氏)。発想の転換により小型化へ設計は一気に進んだ。さらに、摩擦を少なくするための小さな部品を組み込むことで、静音性も飛躍的に向上した。