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先週、経団連と経済同友会の取材で東日本大震災の被災地を駆け足で回った。震災から3年目。仙台市では津波をかぶった田んぼに塩害に強い綿花を植え、綿製品を製造・販売する事業の説明を聞き、ビニールハウス内で葉物野菜やトマトを栽培し加工・流通を図る企業を訪ねた。福島県いわき市では震災で壊れた施設を建て直した温泉リゾートホテルがにぎわいを取り戻し、地元の雇用に貢献している様子を確認した。一方、いまなお放射線量が高い東京電力福島第1原発周辺では復旧・復興作業が手付かずのままで夏草だけが生い茂っていた。
復興庁などの資料によれば空港、港湾などのインフラ復旧は順調に進んでいる。だが、土木の技術職や用地関係の事務職など復興作業に必要な専門的知識や経験を持つ人材が圧倒的に不足している。被災者の生活に直結する生業(なりわい)の再生は緒についたばかりで、東北沿岸部では農業や水産業の早期再生が課題だ。仮設住宅暮らしが長期化しているため地域コミュニティーの弱体化も懸念されているし、地元に仕事がないため被災地からの人材流出も顕著だ。
ILC候補地は、研究者で組織する「ILC評価委員会議」が8月にも決定する見込み。東経連の高橋宏明会長は「東北に決まれば新たな産業の集積が進む」と期待感を示す。ただ「どちらがいいかは専門的な判断が基本だ。政治的な圧力で結果がおかしくなっては困る」と語り、候補地選定には地質や地形などの調査結果に基づいた公正なジャッジが不可欠ともくぎを刺した。
候補地が一本化されたら、政府には早急に誘致へ向けた政府間交渉に着手してほしい。同時に省庁横断的なチームをつくり、施設の整備だけでなく、世界中から集まる研究者・技術者が安心して暮らせる住居・教育・交通などの環境整備を図る。国だけでなく民間の資金やノウハウを取り込む仕組みづくりも必要だ。