三菱航空機の川井昭陽社長(左から2人目)ら幹部。手前は開発中の小型ジェット旅客機MRJの模型=8月22日午後、東京都港区の三菱重工業品川本社ビル(小野淳一撮影)【拡大】
しかし、今回の遅れが、激しい受注競争を勝ち抜くには重荷になるとの見方は強い。MRJの強みは、米国プラット&ホイットニー(P&W)が開発した最新鋭エンジンを採用し、競合より2割の燃費性能を実現することだ。ただ、実機の裏打ちがなく、燃費効率の高さを売り込むのはハードルが高い。
さらに、この市場でトップのエンブラエルは今年6月、P&Wの最新鋭エンジンを採用した新型機開発を打ち出し、2018年の投入を表明した。川井社長は「まだMRJの性能が勝る」と強調するが、「エンブラエルの新型機デビューはMRJの優位性を薄める」(業界関係者)と見る向きもある。
一方、今後、買い手となる航空会社への影響も避けられない。川井社長は会見で、顧客である航空会社の反応を問われ、「『失望した』との厳しい言葉も頂いたが、同時に『がんばれ』という励ましもあった」と明かした。
受注苦戦の長期化は、三菱重工本体の経営体力をじわじわと奪う懸念もある。受注は325機を数えるが、昨年末以降は受注がなく、500機前後の採算ラインには届かない。