原料炭と鉄鉱石価格【拡大】
とはいえ、鉄鋼市況悪化の懸念が払拭されたわけではない。中国の鉄鋼業界の過剰生産が解消されず、潜在的な価格の下押し圧力となっているのだ。
日本の年間粗鋼生産が1億トン強であるのに対し、中国の粗鋼生産量は今年1~6月は月産6000万トン超で推移。5月には6703万トンと、史上最高を記録した。中国経済の減速がとりざたされているにもかかわらず、上期では前年を7.4%も上回り、05年以前の年間生産量を半年で超えた計算だ。こうした中国での過剰生産が東アジア市場全体の需給を軟化させている。
五百旗頭氏は「中国は経済成長率こそ減速したが、インフラ投資や不動産投資はまだまだ伸びており、鉄鋼需要もある。地方政府による生産支援もあり、大幅な調整局面が来るまでは現在の鉄鋼生産ペースの水準が続くはず。問題は、調整局面がいつ来るかの予測が極めて困難ということだ」と指摘した。