スクエアのようなサービスによって蓄積された知恵と技術を生かして、コインはiPhone(アイフォーン)のiOS7で採用されたiBeacon(アイビーコン)という省電力ブルートゥースの通信技術を使って、アプリとのやり取りを行う仕組みを作った。ブルートゥースで信号を送受信する端末とモバイル機器との組み合わせによって業界をひっくり返すような技術が生まれる。アイビーコンを使ったコインとスマホの組み合わせは、その一例ととらえられる。
コインはアイビーコン技術を使ってクレジットカード情報をやり取りしているわけだが、同じ技術を用いて、近接リーダーを使った電子ロックに対し、それを解除するための識別情報を送信することもできるだろう。
企業が事業者ごとのカードシステムを使ってセキュリティーを固めるよりも、社員のスマホにアクセスキーを取りこんでしまった方が安上がりだと気付けば、オフィスビルに入るために利用しているアクセスパスも、今後数年で徐々に姿を消していくかもしれない。
◆偽造防止など課題
しかし、コインにも成功の前に立ちはだかる大きな壁がいくつかある。1つは、米アップルが最終的に決済アプリ群を競合とみるかどうかにかかってくる。競合と判断した場合、コインに対してもクレジットカード情報をアップルの決済システムに保管するよう要求する可能性があるだろう。
また、コインを客から受け取る側の店舗はどう反応するだろうか。こうした端末を使って詐欺を働こうと考えればその余地はいくらでもあるだろう。コインのアプリを使えば、スライドして保存したカード情報に加えて、カードの写真を撮影して照合し、保存しておくことができるため、もし店員が実際のカードを提示するよう求めれば、その写真を見せることはできる。そうは言っても、犯罪者がカードを簡単に偽造することができるのは事実だ。