だが名門とはいえ、東レの連結売上高は約1兆6千億円、従業員は約4万人で、米倉氏が会長の選考基準に挙げた「日本を代表する製造業」としては小粒の感が否めない。日本最大の経済団体である経団連で異例の起用となった榊原氏が、どれだけ組織の求心力を集められるかは未知数だ。
榊原氏には安倍晋三政権と歩調をあわせてデフレ脱却に向けた道筋をつけるとともに、経団連の運営のあり方の改革も求められる。就任を固辞した川村氏が「経団連という組織に疑問がある」と関係者に漏らすなど、財界活動のあり方には会員企業からも疑義の声があがる。
例えば経団連の夏季セミナーや地方懇談会では、不規則発言を防ぐため、会長・副会長の発言も事前に事務局が模範発言を下書きしている。こうした“予定調和”が横行する現状に対し「小学生じゃあるまいし」と不満を漏らす副会長は少なくない。「企業経営に透明性が求められている時代に、こんなやり方ではいくら政策提言をしても信用されない」(財界首脳)と指摘する声もある。
東レのコーポレート・スローガンの「イノベーション・バイ・ケミストリー」(化学による革新と創造)と同様に、財界総本山の経団連で榊原氏がイノベーションをどう実現するか。榊原氏のリーダーシップに注目が集まる。