政府に認定された東京電力の新たな総合特別事業計画(再建計画)では、原発10基分にあたる出力計約1千万キロワットの老朽火力発電所を、外部パートナーと組んで建て替える方針が改めて示された。東電は発電所の高効率化で燃料コスト低減を図るが、電力の完全自由化を視野に、他の電力会社だけでなく、ガス事業者などもパートナーに名乗りを上げている。(宇野貴文)
福島第1原発事故後の原発の長期停止によって、東電の平成24年度の燃料費は2兆7885億円と事故前の約2倍に達した。燃料費の増大は経営再建の足かせになりかねない大問題だ。
東京湾岸で稼働年数が40年以上経過した東電の火力発電所は6カ所ある。こうした老朽火力を、最新鋭の液化天然ガス(LNG)火力に建て替えることで高効率化すれば、燃料費の削減につながる。
電力各社の中で、東電のパートナーとして最有力視されるのが、中部電力だ。
昨年10月に三菱商事系の新電力、ダイヤモンドパワー(東京都中央区)を買収して首都圏での電力小売りに参入するほか、11月末には96・55%を出資して、東電と特定目的会社(SPC)を設立。32年度から常陸那珂石炭火力発電所を運転する計画で、首都圏進出を着実に進めている。
中部電は大阪ガスと共同で、米国産の安価なシェールガス由来のLNGを29年度から年間220万トンずつ調達する計画を立てる。東電にとっては、燃料調達の面でも中電とパートナーシップを組むメリットがある。
東電の老朽火力には大ガスも熱い視線を送る。尾崎裕社長は「機会があればビジネスをしたいし、電源も必要になってくる」とし、首都圏進出に意欲をのぞかせる。
東京ガスも黙っていない。袖ヶ浦火力(千葉県、360万キロワット)と南横浜火力(横浜市、115万キロワット)の両発電所は、東ガスと東電が共同運営するLNG基地に直結。東ガスが更新と運営を行うことが有力視されている。
東電再建策をにらんだ、各社の先陣争いはすでに始まっている。