勝沼地区にあるワイナリー「シャトー・メルシャン」を訪問したアシュトン氏(右から5人目)と筆者(同6人目)=山梨県甲州市【拡大】
□平出淑恵さん(酒サムライコーディネーター)
先週の8日から6日間、英国で30年の歴史を持つ世界最大のワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」の運営責任者、クリス・アシュトン氏が来日し、国内各地の訪問に同行した。日本を訪れた主な理由は海外の日本酒審査会では、これも世界最大規模となったIWC日本酒部門に「スパークリング日本酒」「特定名称酒以外の酒」の2部門を新設することに関する最終打ち合わせと市場視察を行うためだ。そして、最近IWCのチャンピオンサケを受賞した蔵への表敬もあった。
実は2007年にIWC日本酒部門ができるまで、IWCには日本からの審査員はいなかった。それだけ欧米ワイン業界のための大会という色合いが濃かったのだ。
日本酒を海外専門家に紹介する意味でも、そこに日本酒部門ができた意義は大きかったわけだが、本来はワイン審査会であり、以前から日本のワイン業界関係者の審査員が望まれ、実際に何人かが参加してきた。
勝沼醸造(山梨県甲州市)の専務、平山繁之氏も07年当時からワイン部門の審査に加わってきた一人だ。今回、平山氏の働きかけでアシュトン氏の山梨訪問が実現し、老舗ワイナリー5カ所を視察できた。地域を代表するブドウ「甲州」種のワインの多様性を同氏に知ってもらうとともに、勝沼のワイナリー関係者にはIWCに「甲州」ワインを出品し、世界に発信する可能性について考えてもらいたいという願いが込められた。どのワイナリーも自慢のワインを丁寧に説明していた。
毎年の審査を通じての大会関係者との交流から、こうした新しい広がりが生まれてくる事例を見ると、人と人との関係が全てを変えていくのだと感じる。人と人との共感をつないでいく、ソフトパワーの代表とも言えるワイン。その審査会に生まれた日本酒部門がきっかけとなって、日本産のワインもまた、世界に発信されようとしている。
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