西武池袋本店では消費増税前の駆け込み需要を狙って春夏用オーダースーツの受注を前倒しで受け付けている=1月28日、東京都豊島区【拡大】
4月の消費税率引き上げまで2カ月を切り、百貨店など流通業界で駆け込み需要を狙った季節商戦の前倒しが相次いでいる。景況感が改善してきた中での増税とあって、必需品だけではなく「長く使える良い物」を売り込む商機としての狙いも透けてみえる。需要がピークを迎える3月に向けて各社とも取り組みを強めている。
寒風が吹き付ける1月下旬、西武池袋本店(東京都豊島区)の紳士服売り場には「ひと足早く春を誂(あつら)える」の文字が並んだ。同店では紳士の春夏パターンオーダースーツの受注を例年より1カ月早い1月15日から始めた。
例年は3月と5月にピークを迎える春夏スーツ商戦だが、店頭での販促効果もあり滑り出しは好調。同店紳士服飾部の鈴木晴久係長によると「増税前に長く使える定番商品を買い求める傾向が強い」という。これまでオーダースーツを買う機会のなかった顧客の購買も期待しており、前年比20%増の売り上げを見込む。
節句や結婚式といった「ハレの日」商戦は、絶対額が高いだけに駆け込みを狙う絶好の機会。新宿高島屋(同渋谷区)では「例年はひな人形と入れ替えで3月から店頭展開していた」(広報)五月人形を今月中旬から店頭に並べるという。
松屋銀座本店(同中央区)では結婚式が増加する4~6月に合わせて2月下旬から実施していた「春のブライダルフェア」を1カ月早い1月22日からスタート。結婚指輪や引き出物の購入特典を設け、「結納返しの商品を購入にきたお客さまに早めに引き出物も決めてもらう」(広報)狙い。
三越伊勢丹ホールディングスによると、1月に入って衣料品の購入単価が上がるなど「増税前に良い物を買いたいという消費者心理が伺える」(広報)という。
スーパーも駆け込み需要の取り込みに動いている。ダイエーは年末商戦中の昨年12月に、卒業式や入学式向けの女性用スーツやワンピースを発売。1月は女性向けカラースーツの売れ行きが前年同期比50%増となるなど、商戦前倒しの効果が出ている。(松岡朋枝)