賃上げに前向きな会社はほかにもある。佐賀県の中堅工務店の社長は「従業員の士気を高めるため実現したい」と話す。ある情報通信業幹部も「人材確保のため賃上げを前向きに検討したい」と語る。
トヨタ自動車や日立製作所など日本を代表する大手企業は業績が回復し、今期は過去最高益となる見通しで今春闘は賃上げムードが高まっているとはいえ、多くの中小企業の経営はまだまだ厳しい。
大田工業連合会の舟久保利明会長は「最新設備のない10人以下の町工場は会社を維持するのに精いっぱい。政府には設備投資減税よりも、小さな会社にも仕事が行き渡る仕組みをぜひ考えてほしい」と訴える。お好み焼きチェーンを展開する千房(大阪市浪速区)も、アベノミクス効果で売り上げは回復してきたが、中井政嗣社長は「従業員の給与を上げてやりたいが、ベアは難しい。もう少し回復していかないと難しい」と、賃上げに慎重な姿勢を示す。
ただ、ダイヤ精機のように、中小企業にも景況感を良くしたいとの思いから少し無理してでも賃上げする企業が現れている。もう少し景気が回復すれば、賃上げを検討したいという経営者の声は多い。ベアに踏み切れるのは一部だが、中小の賃上げマインドも着実に変わってきている。
中小で芽生えた賃上げの動きを広げ、景気の好循環を作り出すためには、政府の取り組みにより、企業全体の86・5%を占める20人以下の小規模事業者にまで仕事が行き渡り、従業員の給与が上げられる環境をつくれるかが、これから問われる。(黄金崎元)