そして今回のM&Aを決断したのが、敬三氏の長男である第4代社長の佐治信忠氏。創業者から3代にわたる挑戦により、北米ウイスキー市場にサントリーは橋頭堡(きょうとうほ)を確保したといえよう。
信忠氏は30代だった1980年にペプシコーラの在米ボトリング会社を買収した経験をもつ。日本で98年からサントリーがペプシを扱うきっかけにもなるが、信忠氏はM&Aと北米とを知る経営者でもある。とりわけ、80年以降、サントリーには“M&A後”の失敗がほとんどない。しかし、今回は規模は違う。
蒸留酒は、ウイスキーなど高級酒が多く品質がより問われる分野。世界の酒類業界は90年代半ばから、大がかりな再編を繰り返してきたが、M&A後に品質が劣化したブランドも少なくない。酒づくりのこだわりよりも、生産効率が優先されてしまうためだ。
大型買収を果たした日本企業・サントリーの酒づくりは、果たして米市場をはじめ世界で通用するのか。1プラス1の答えとともに、「やってみなはれ」が試されていく。(経済ジャーナリスト 永井隆)