横浜で開催されたアフリカ開発会議(TICAD)に合わせて行われたイベントで、携帯X線撮影装置をPRするジョブの社員(昨年6月、パシフィコ横浜)【拡大】
■X線撮影装置でブラジル照準
X線撮影装置の生産・販売を手がけるジョブ(横浜市港北区)は三菱総合研究所と組み、ブラジルで携帯X線撮影装置の市場開拓に乗り出す。このほど国際協力機構(JICA)が中小企業の新興国進出を後押しするために立ち上げた基礎調査支援事業に採択され、4月上旬から約3週間、サンパウロの病院や医療機関などへのヒアリングを通じて事業性を探る。
中間層が拡大するブラジルでは、病室で寝たまま受けられるX線検査や、在宅医療向けの需要が見込まれる。「事業性のめどがつけば、サンパウロに生産・販売会社を設立することを検討したい」と尾花博也国際営業部長は初の海外生産事業に意気込む。
だが、中間層が増え有望市場にみえるブラジルの市場開拓は簡単ではない。医療機器輸入は国内産業保護の観点から高額の関税がかかり、単純な輸出は難しいからだ。現地生産が近道だが、中小企業には複雑な税制や煩雑な認可手続きなどのハードルは高く、海外市場調査や進出支援でノウハウのある三菱総合研究所と組むことにした。
ジョブの主力商品は、食品に金属や破片などの異物が混入していないかをチェックする異物検査用X線装置向けの心臓部となる部品の供給で、国内トップシェアを持つ。食品への異物混入は一度事故が起きればメーカーの信頼が失墜し、多額の損失につながりかねないだけに、24時間稼働で故障が許されない厳しい要求基準が求められる。
ニッチだが、この信頼度の高い技術を応用しない手はない。そこで1997年に研究を開始したのが動物用の携帯X線撮影装置だった。2006年から販売を開始し、累計200台を売り上げた。同装置は高額で取引される競走馬向けの需要をみこんだが、予想外の市場もあった。西部劇の本場、米テキサス州などでは馬を持つことがステータスでペット向け需要が少なくなく、売れ行きは好調だ。