春闘の回答状況をボードに書き込む金属労協の担当者=12日午後、東京都中央区【拡大】
トヨタ、2700円の意味
今春闘は「社会的責任」が労使双方を突き動かすキーワードだった。ベア復活の舞台裏には、国際競争力の維持をにらみつつ、安倍晋三政権から課せられた社会的責任の「模範解答」を探る苦肉の交渉劇があった。
14年3月期に2兆4000億円の営業利益を見込むトヨタ自動車の労使交渉は例年以上に重責を担った。日産自動車がベアの満額回答を決める一方、15年4月から軽自動車の税負担が増すことから、軽大手のスズキは鈴木修会長兼社長が「賃上げなど考える暇もない」としていた。
そうした中、トヨタが示したベア2700円は4000円の要求額を下回り、日産よりも低い。さらに連合が求めた「1%以上」にも満たない。しかし、この数字には大きな意味がある。満額に近い水準で着地すれば他業界が追随できず、グループの下請け企業が置き去りになる恐れもある。一方で他業界に見劣りすれば「内部留保をため込み、相場を引き下げているとの批判を受けかねない」(業界関係者)。ベアと定期昇給分7300円の合計額は21年ぶりに1万円に乗る。「ギリギリの着地点」(トヨタの宮崎直樹専務役員)だった。
自動車業界の交渉が難航する中、今春闘の相場を引っ張ったのは電機業界だった。大手6社は現行の要求方式の下で最高額となる2000円のベアを回答。鉄鋼や造船・重機などベアに慎重だった他業界の背中を押した。