「こうした役割(監督機能)を社外取締役が果たす企業統治の形を“モニタリング・モデル”といいます。1970年代に米国で提唱され、すでに世界標準ともいえる考え方ですが、日本の経営者にはあまり理解されていないように思います」
◆強い敵対的なイメージ
--日本では、こうした仕組みの本格的な導入について拒否反応もあった
「日本で経営者の評価という意味での“監督”があまり理解されなかった背景には、日本の経済界に積極的な姿勢がみられなかったことに加え、コーポレート・ガバナンスに関する改善を、監査役制度の強化のみに頼ってきたこと、などがあるとみられます。ただ、取締役会の議決権がなく適法性監査などを職務とする監査役と、経営者の評価という意味での“監督”が職務の社外取締役は役割が違います」
「経済界が乗り気ではなかった理由には、“監督”=経営者の評価、が“敵対的”なイメージでみえたことにもありそうです。しかし、誠実な経営者にとっては、むしろ“監督”は“支え”になります。経営者の“監督”機能を持った企業は、社員や投資家といった利害関係者からみても安心感がありそうです。社外取締役の選任が進んだ状況を踏まえ、経営者がこの点に気づけば、日本の取締役会も大きく変わることでしょう」
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■今後の会社法改正に影響
今回の提言にあるコーポレート・ガバナンス(企業統治)の形態は、今後の日本の会社法にも影響を及ぼしていくことになりそうだ。
現在国会に提出されている改正案では、上場企業に対する社外取締役選任義務こそ課されなかったものの、有価証券報告書の提出義務を負う一定条件の監査役会設置会社については“社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない”とされた。