◆直訳避け平易に
現在のメーンの仕事は産業翻訳。海外投資家向けのアニュアルリポートや財務短信、決算説明会資料などが主な中身だ。当初は幅広くサービスを手がけていたが、翻訳の世界も価格破壊に突入。コスト削減のため中国に委託するケースが増え、「一緒の方向にいったら負けてしまう」との判断に基づき、現在の事業モデルを追求していった。
アニュアルリポートの作成は、ただ翻訳すればよいというものではない。対象となる会社の全体像を十分に理解した上で「今年はこの事業の業績が好調なので、こういった見せ方をしましょう」といったプレゼン力が不可欠となる。この部分に磨きをかけることに集中した。
日本の翻訳は直訳が主流だが、その構造を変えるため差別化戦略にも力を入れた。具体的には平易な英語を使用し、「1つのセンテンスでは最大15ワード」「二重否定をしない」「関係代名詞を使用しない」「一番最初に結論を書く逆ピラミッド型とする」などの取り決めを行い、徹底化していった。社長の人となりも重要な投資基準。こうした文書を書くことで、社長の人柄を浮き彫りにし、投資が有利に進むことにつなげる。
海外投資家の動向が活発な点を踏まえ、上場企業は翻訳事業会社から提案を受ける日々だという。このため、激しい競争を勝ち抜くには「質の高い翻訳とかゆい所に手が届くようなサービスが必要」(浅井社長)。こだわりが、技術部のリリースや、外国人社員向け就労規則の翻訳を受注とするなど、副次効果として顕在化している。この循環モデルをさらに高度化できるかが、今後の鍵になることは確かなようだ。(伊藤俊祐)
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