東レはこれまで、「当社の業務に精通した取締役が意思決定、執行および監督に当たることが経営責任の遂行、経営の透明性に繋(つな)がる」という理由で社外取締役を置いて来なかった。
今回、伊藤教授を選んだことについては、同氏が東レの人材育成機関で長年講師を務めたことなどから、同社の事業内容に精通していると説明している。苦しい言い訳といったところだ。経団連の新しい会長会社までもが方針転換したことで、社外取締役設置は一気に広がるだろう。法律が施行される来年までにはおそらく大半の会社が選任するに違いない。
今後の問題は、その社外取締役がきちんと会社や経営者から独立し、しっかり社長にモノを言える存在になるかどうかだろう。東レの事業に精通しているという伊藤教授は、逆に言えば長年講師として会社の事業にコミットしてきた“身内”と見ることもできるかもしれない。
東レに限らず、付け焼刃で社外取締役を導入した会社は、従来は顧問として報酬を払ってきた弁護士・税理士や、所管官庁の官僚OBなどを迎えているケースが少なくない。彼らが社外取締役として本当に機能し、企業の収益改善に貢献できるのかどうか。今後は社外取締役の「質」が問われることになる。(ジャーナリスト 磯山友幸)