それでも産業界には「株主総会での説明は簡単な内容で大丈夫ではないか」と楽観的な受け止めが広がっていた。昨年11月にこのコラムで「この会社法改正案では経営改革につながらない」と指摘したのもこのためだ。だが、予想外だったのは、法務省が社外取締役を導入しない際の理由説明を企業に厳しく求めたことだ。
国会における法案審議の中で谷垣禎一法相は「事実上の選任義務付けと受け止めてもらって構わない」と答弁するなど、社外取締役の設置を強く促す姿勢を示した。政府の成長戦略でも社外取締役の導入促進が盛り込まれており、企業収益の向上を通じて日本経済の成長を促す観点から社外取締役の必要性を認識したからだろう。東証でも2月からは上場企業に対し、社外取締役の選任を求める努力義務を課した。
日本取締役協会によると、昨年8月時点で社外取締役を導入しているのは東証1部上場企業の6割あまりに達している。東証の求めもあり、来月に開かれる株主総会でも多くの企業で社外取締役の選任を議案に盛り込む企業が相次ぎそうだ。何よりも「横並び」を意識する日本企業だけに今後、社外取締役の選任が一気に進むのは確実な情勢だ。
もはや社外取締役の選任をめぐる是非を問う時代は終わった。これからは「社外取締役に何を求めるか」を真剣に考えなければならない。最近では企業の不祥事が相次いでおり、法令順守の役割を社外取締役に求める声が多い。だが、社外取締役の本来の役割は、あくまでも経営の監視にある。内部昇格した役員とは異なる客観的な目で経営判断を下し、場合によっては経営陣に苦言を呈する立場だ。経営陣の判断を追認するだけなら、本来の役割を果たしているとはいえない。