山田さんは研究開発に携わっていた期間、「消費者の声を十分にとらえられていない」といった現実にもどかしさを感じていた。こうした中、趣味で始めたメルマガが、思わぬ反響を呼ぶようになる。
メルマガでは実際に商品を購入し、「試してみたらこうだった」ということをブログの形で発信。通勤時間帯を利用して文章を書き、パソコンで打ち直していた。化粧品の売れ行きはもともと、知人や友人の口コミによって支えられている。そんな性質もあって瞬く間に読者が1000人に達した。
◆国内の全商品網羅
返事もいろいろと寄せられるようになった。それぞれの声は熱く、新たな情報発信スタイルについて「多くの人が必要としている」といった確信を抱くとともに「自分の所にだけ置いていてはいけない」といった使命感が芽生えるようになる。そこで思いついたのが、消費者だけではなく化粧品メーカーにとっても有意義なデータベース的サイトを、インターネット上に開設すること。大学時代の同級生でもある吉松氏に相談を持ちかけたところ、「面白い」と米国の事例の研究を進め本格的な事業化に向かっていった。
当初、化粧品メーカーは「悪口をかかれるかもしれない」といった理由で積極的に情報を公開しなかった。ところが、「食べログ」など消費者発信型のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及によって、消費者とのコミュニケーションが無視できなくなり、次第に存在感は大きくなる。
現在、アットコスメでは、国内で流通しているすべての商品を網羅するようになった。また、商品は優れているけれど容器が今ひとつといったケースの場合、消費者の意見を反映させて容器を改良。ヒット商品として蘇生(そせい)するなど、「ユーザーとメーカーをつなげる重要な役割」(山田取締役)を果たしている。(伊藤俊祐)