しかし、それから10年が経過した時点でもテレワークの普及は進まなかった。このため「世の中を変えたい」といった思いから、企業に対するコンサルティングを通じてテレワークの導入を促す、テレワークマネジメントという会社を立ち上げた。
◆「市場が見えてきた」
同社が提唱するのは、ネットオフィスの導入。「在宅に適しているのは1人で集中する仕事という概念では、なかなか普及しない」(田澤社長)という考えの下、バーチャルな仕事場ながら会社にいるときと同様の業務に携わる環境をICTで構築する。自宅から朝礼や会議に参加したり資料の共有化を図ることも可能だ。
安倍政権が女性の社会進出を促すためにテレワークを重視し、企業への助成金制度も開始したこともあって、今年に入って相談件数は大幅に増加。田澤社長は「市場が見えてきた」と手応えをつかんでいる。
テレワークマネジメントでもテレワークを活用する社員がいる。その中の一人はセミナー運営の企画などを担当。「通勤を行わずに済むため体力の消耗を予防できるし、仕事の直前まで家族と一緒にいられるのがうれしい」と語る。
テレワークには「自由に働くことができる」といったイメージが強いが、田澤社長は「時間を管理しながらどの時間を自由に活用していけるかがテレワークのメリット」と指摘。時間管理にこだわった事業展開に力を入れ、その一環として子供の送り迎えなどで離席した際にも的確に管理できるタイムカードも実用化している。
日本では、事務職など「ホワイトカラー」労働者を対象として成果に給与を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入を検討する企業が相次いでいる。こうした中、田澤社長はテレワークを普及させることによって、「時間と成果で評価することが重要」と強調している。(伊藤俊祐)