四面楚歌(そか)の状況で阿部社長は迷いに迷ったが決断し、そのことをまず役員会の席上で話した。「退社したい人を誰一人として止めないが、会社は誰一人として解雇しない。この大震災で家族や家を失い、地域のコミュニティーまで、ずたずたに寸断されてしまった従業員の唯一の“絆”は会社しかない…。この生きる糧である絆まで切ってしまったら、さらに従業員を心身ともに傷つけてしまう。全従業員は私たちの家族だ…。だから全従業員を『休職』扱いとして順次復帰していただく。この決断に不満な人は社長の解任発議をしてほしい…」と。
創業者であり、カリスマ的存在である会長をはじめとした他の役員も、社長の決断に涙し再建を誓い合ったという。
しかしながら、この決断は無謀という人もいると思われる。というのは解雇すればその瞬間、関係性は切れるが、休職の場合、あくまで従業員であり、少なくとも会社負担の社会保険料などの支出を余儀なくされるからだ。その額は毎月約2000万円、年間ではなんと2億4000万円となる。しかも会社は全壊し、ほとんど営業ができていないのにである。
同社を社会人大学院生と訪問調査する機会があった。阿部社長が「今年の売上高は震災前のピークに戻りそうです。従業員さんも500人復帰してくれました…」と話してくれたときは一同涙があふれだしてきた。
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【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。