さらには、清涼飲料水の「ポカリスエット」などで知られる大塚製薬と協力し、民間企業として初めて月に物体を送り届ける計画に参加。来年10月の打ち上げを目指し、子供たちのメッセージを詰めて月面に置くカプセルの開発を進めている。
◆構造改革でV字回復
由紀精密は創業以来長らく、電気・電子関係の売り上げがほぼ100%を占めていた。しかし、1990年代に入ると需要が減少し、さらにはより安価な海外のネジに太刀打ちできなくなっていた。
そのような状況の下、大学院まで東大で工学を学んだ大坪社長が、常務取締役として06年に入社。自社の強みを知るために行った顧客アンケートで、不良品を出さずに納期を守るという「信頼性」こそ最大の財産と知った。この結果を受け、精密部品への信頼性が最重視される航空宇宙関連への進出を決意。11年には世界最大規模の国際見本市であるパリ航空ショーに出展するなど、積極的に販路の拡大を続けてきた。
翌年に横浜市内で開かれた、中小企業が自作のコマで加工技術の高さを競い合う「第1回全日本製造業コマ大戦」では初代チャンピオンに輝き、知名度はさらに向上。今年5月には東海道新幹線の新横浜駅近くに「横浜ファクトリー」を開設した。
昨年度の売り上げは、01年度の2.5倍までV字回復し、過去最高を更新。「他業種への事業展開を図った結果、全く異なる会社に生まれ変わった。しかし、根底にあるのは、60年間にわたって積み上げられた精密切削加工の技術だ」と、大坪社長は強調する。(小野晋史)
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【会社概要】由紀精密
▽本社=神奈川県茅ケ崎市円蔵370-34 ((電)0467・82・4106)
▽創業=1950年
▽資本金=2000万円
▽従業員数=約20人
▽事業内容=航空宇宙関連部品、医療機器関連部品、電気・電子部品の試作や量産その他
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