◆出店形態は多様
最初のターゲットは近所の商店街にあるレコードショップとお茶屋さん。「休店日に軒先を貸してほしい」と交渉をし、野菜の販売や携帯電話の販促拠点として活用された。その後、2008年に「軒先.com」を立ち上げると「下北沢や恵比寿で場所を借りたい」といった人気スポットでのリクエストが届くようになった。
ただ、新たなビジネスモデルなどで貸す側への認知度が低く、営業では苦労を重ねた。風向きが変わったのは同年秋のリーマン・ショックだ。
商業ビルを複数棟所有するあるオーナーは、売却予定のビルが景気の急激な落ち込みで売れなくなった。改修もしていなかったため「こんなビルを活用する人がいるのか?」と半信半疑のまま、「少しでもいいから現金収入がほしい」と軒先に駆け込んだ。ところが人気は高く、一定の収益を計上することに成功。オーナーは「このままでよければ使ってほしい」という姿勢に変わった。こうした実績を積み重ねた結果、「潜在需要は大きい」と西浦さんは判断。法人化に乗り出し、本格的に事業を進めることにした。
事業が加速するもう一つのきっかけは、全国規模の書店組合と提携したこと。これによって郊外書店の駐車場を活用し野菜販売を行えるなどのルートを確立した。
現在は全国登録数は2500カ所。首都圏を中心としたオフィス地域では移動型ランチの販売店が出店したり、営業店舗の一角でスイーツを取り扱うなど形態はさまざまだ。効率的に集客できるため、不動産の有効活用を図れるという理由から貸す側の注目度も高まってきた。
西浦さんは「『週末を使って気軽に販売してみたい』といったアマチュア層のニーズがあるはず。こうした需要を掘り起こして市場の活性化を図りたい」と語っている。(伊藤俊祐)