来年の春闘で多くの産業別労働組合が、賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)について、17年ぶりの高水準となる要求を出す見通しだ。自動車や電機などの労組で構成する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)は12日、6千円以上のベアに相当する賃金改善を要求する方針を正式決定した。ただ、消費税率10%の時期が延期されるなど、景気の先行きに不透明感が漂う中、労使交渉の行方は混とんとしている。
■消費拡大に“大義”
「デフレ脱却と経済の好循環を実現し、勤労者の生活を守る」
12日の協議委員会で金属労協の相原康伸議長は、執行部案をまとめた「基本的な考え方」についてこう説明した。6千円以上は平成10年以来の高水準で、傘下の自動車総連や電機連合も足並みをそろえる方向だ。
6千円は、一般的労働者の標準的な月例賃金の約30万円からみると2%に相当する。上部団体である連合が2%以上のベアを求める闘争方針を掲げたことを踏まえた。
各労組の強気の背景には、個人消費を活性化して景気改善やデフレ脱却につなげる政府方針と合致しているという“大義名分”があるようだ。円安の恩恵を受け、自動車を中心に企業業績は改善基調にあり、従業員に還元すべきだとの主張をしやすい。
■格差是正も課題
4月の消費税増税などで、物価の変動を考慮した実質賃金が減少している現状も賃上げ機運を高めている。今月2日に発表された10月の実質賃金は前年同月比2・8%減で、16カ月連続のマイナス。金属労協は「家計の低迷が景気回復の足かせだ」(相原議長)と主張する。