スイングラボの鍵となる技術は、プレーヤーのスイングの速さや方向を正確に測定する「スイングセンサー」だ。10年から本格的に始まった共同開発では、高性能センサーをグリップエンドに装着したラケットで実際にボールを打ち、測定を繰り返した。しかし、その衝撃が想定を超えてしまい、「解析不可能」となってしまうことも。また、プレー中にラケットを回す動きや、グリップエンドに小指を引っかけるような、ボールを打つ以外の動作も誤った解析結果につながった。
センサー開発を担当したセイコーエプソンの小平健也センシングシステム事業部主事は「1000分の1秒ごとのラケットの位置がどう変化しているかが求められた。これが高いハードルだった」と振り返る。
試行錯誤が続く中、セイコーエプソンは11年10月、身体の姿勢や運動の軌跡を3次元(3D)で表示できる計測システム「M-Tracer」(エムトレーサー)を開発したと発表。デジタルカメラなど電子機器向けのセンサー計測技術を、スポーツの運動解析に転用することに成功した。その後の技術改良により、電池を含めたセンサーの大きさは、最初の試作品に比べて5分の1まで小さくなった。「開発当初、プレーヤーはセンサーから数値を受信するパソコンを背負ってボールを打っていた」(小平氏)ことは、今となっては笑い話になった。