米国の研究例では、米産業環境医学協会(ACOEM、産業内科医と外科医の協会)が健康への取り組みについて表彰した企業と、S&P500(スタンダード・アンド・プアーズが選定した主要業種を代表する500社)の企業に同じ金額を十数年間、仮に投資した結果を比べると、表彰を受けた企業の累積リターンが圧倒的に多いことが明らかになっている。
また、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの試算では、従業員への教育などで1ドル(約119円)を健康投資した場合、3ドルのリターンが得られることも報告されている。
日本も2009年4月~14年9月の5年半にわたるTOPIX(東証株価指数)と「健康経営」に取り組んでいる企業(厚生労働省「健康寿命をのばそう!アワード」受賞企業と日本政策投資銀行の「健康経営格付」融資先)とを比較すると、明らかに健康経営を実践している企業の株価が高いことが見て取れる。
まさに「企業は人なり」という通り。働いている人が元気でなくて、企業が元気であるはずがない。従業員と家族、企業、地域、社会全体のヘルスケア・コストを削減し価値を高める「健康経営」こそが日本経済の新基準となる。(西川りゅうじん)
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【プロフィル】西川りゅうじん
にしかわ・りゅうじん マーケティングコンサルタント。ウォークマンの販売促進、六本木ヒルズの商業開発、愛・地球博のモリゾーとキッコロや平城遷都祭のせんとくんの選定・広報に携わるなど産業と地域の元気化に努める。厚生労働省「健康寿命をのばそう!」運動スーパーバイザー、神奈川県まちづくり委員会座長、日光市まちづくりアドバイザーなどを歴任。1960年生まれ。