臨時記者会見で電気料金の再値上げについて説明する関西電力の八木誠社長=2014年12月17日、大阪市【拡大】
「万が一でも」とは、原発を再稼働するならゼロリスクを証明しろということであり、「甚だしい筋違い」とは、温暖化対策に原発は不要ということだ。この半ば感情的な樋口判決には多くの批判もあるが、法曹界にはむしろ支持の声が広がっている。
原発訴訟では、1992年の伊方原発1号機(愛媛県)の最高裁判決が有力な判例となってきた。同原発の認可過程に違法の可能性を指摘しつつも、行政庁の判断を尊重した最高裁判決は、今や「司法は原発の安全性判断から逃げた」とも批判される。その結果、福島第1原発事故を防げなかったという法曹界の悔恨が、樋口判決の支持の底流にあるのだろう。しかし、そんな感傷的な贖罪(しょくざい)意識の中で、司法が今後、誰も反論できない「人格権」の法益を楯に判決を下していけば、すべての原発は再稼働できない。
前出の法曹関係者はこう警告する。「震災以降、原発訴訟の潮目は変わった。が、電力会社の幹部は最高裁判決を頼りに今も高をくくっている」
関電に話を戻そう。原発の仮処分申請は通常、審議に1年以上かかる。ところが、原告に同情的な樋口判事が3月に福井地裁から異動する。その前に仮処分を決定しようと、審議が早まることは容易に想像でき、その場合、関電は来年度以降も、原発が1基も動かない事態に見舞われるのだ。
再値上げによって5期連続赤字を回避する関電-。しかし、その先に光明は見えない。
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【プロフィル】山崎康志
やまざき・やすし 日本工業新聞、外資系通信社記者を経て2001年独立。記者時代からエネルギー産業、IT産業、郵政事業、産業政策などを取材。著書に「電力・ガス業界大研究」(産学社)、構成に仙谷由人著「エネルギー・原子力大転換」(講談社)。1959年東京生まれ。