急激な原油安の影響で、企業業績は業種によって明暗が分かれている。原油の在庫価値の目減りや、原油安を背景とした資源関連事業の低迷で、大手石油元売りと大手商社は2015年3月期に合計1兆円を超える損失が発生する見通しだ。一方で燃料費の削減につながる空運や海運企業の業績は押し上げられている。原材料やガソリン価格の下落などを通じて個人消費を刺激するなど、原油安は長期的には国内の景気にプラスの効果をもたらしそうだ。
「全く予想していなかった」。5日に決算を発表したコスモ石油の滝健一常務執行役員は、急激な原油安への戸惑いを隠さなかった。原油価格は指標となる米国産標準油種(WTI)で14年初めに1バレル=100ドル程度だったが、15年1月は50ドル台を割る水準で推移。1年で、ほぼ半値にまで下落した。
石油元売り各社は原油の備蓄義務があり、原油安は在庫の評価損につながる。コスモ石油が15年3月期の最終利益予想を910億円の赤字(従来予想は140億円の黒字)に下方修正するなど、通期は全社が最終赤字に転落する。
海外の油ガス田に投資する大手商社も、原油安で業績が悪化した。さらに原油安に端を発し、商品市場からマネーが流出。鉄鉱石など他の資源価格の下落に波及したことも、採算悪化に拍車をかけた。