その際のアドバイスとしては、構造成立性が成り立っていなくとも、少し時間を取ることが良いのではないだろうか。設計者は現時点ではムリと言いながらも、いろいろな角度から再検討し、部品メーカーなどとも相談しながら、小型化や搭載レイアウトを見直すことで問題が解決することも多い。
もし、どうしてもそのデザインをキープするしかないと至ったならば、腹を決めてその部品を作っていただくメーカーを探すことが大切となる。その良い例が「iPhone(アイフォーン)5」や同6などの筐体(きょうたい)となるユニボディーであろう。アルミ合金を切削で作るユニボディーは、薄く、軽く、強くすることができ、つなぎ目やネジがない。アップルは、過去から徹底的に外観にこだわってユニボディーを製作しており、そこに妥協は見られない。
結局、設計責任者は、商品の価値を理解し、どうすれば顧客満足度の高いモノができるかを考え、デザイン、構造成立性、コスト、日程などを勘案しながら、どこでバランスのとれた着地点を見つけることができるかどうかが醍醐味(だいごみ)であろう。
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【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャー、EVビジネス本部上級エキスパートなどを歴任。13年3月退社。同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーションコンサルティングを設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。58歳。福井県出身。