日本のIT産業の停滞はIT企業自身の問題だが、IT産業は基本的に受注型産業である。発注者である国内企業や国・自治体に攻めのIT戦略がなかったために日本のIT産業が強くなれなかったという側面は否定できない。電子情報技術産業協会(JEITA)が2013年に日米企業の非IT部門を対象に行った意識調査では、IT投資が「極めて重要」と答えた企業は米国約75%に対して日本は約16%。今年2月に公表した「攻めのIT投資」に関する実態調査でも「極めて積極的」と答えた日本企業は14%にとどまった。
IT戦略で最も重要なポイントは「情報連携」である。そのためには「標準化」の推進と「セキュリティー」の強化が不可欠だが、日本企業はどちらも中途半端だ。その最大の障害となっているのは、大企業に蔓延(まんえん)する「囲い込み意識」である。既存顧客を囲い込んで手っ取り早く儲(もう)けようとするから標準化にもIT投資にも積極的になれないのだ。
経産省で議論されている「IoT時代に対応したデータ経営2.0の促進」も08年に米IBMが打ち出したビジョン「Smarter Planet」と中身は同じ。欧米では国レベルのIoT戦略の構築に着手し、同時期に日本でも経産省が「2050研究会」を立ち上げた。
ドイツは11年に国家戦略「インダストリー4.0」を策定済みだが、日本では報告書が公表されないまま個別分野の対応に。当時、研究会の取りまとめに課長補佐として奔走した伊藤慎介氏は自らイノベーションを起こそうと経産省を退官し、14年9月に超小型モビリティのベンチャー企業「リモノ」を立ち上げた。