■日本サイトM&A協会代表理事・和家智也
ウェブサイト売買という新しく、成長している市場では、必ずしも「買って得をした」「売ってもうかった」という良い話ばかりではない。事業を売買すれば、数百万円から数億円というお金が動く。売り手は、愛情を注いで育ててきたウェブサイトを手放すことになるため、しっかり運営を継続してくれる買い手かどうかを見極める。一方、買い手は事業拡大を目的としてウェブサイトを手に入れる代わりに多額のお金を支払うため慎重に結論を下す。
しかし、それでも失敗は生じる。
失敗談としてよくあるのは、ウェブサイトを買収した後に、売り上げを伸ばすどころか、ずるずると売り上げが落ちてしまうという事例だ。とくに「ネットに詳しい担当が社内にいるので、買収したネットショップの店長を任せてみよう」というパターンが危険だ。つまり、人の問題である。
インテリア家具の通販サイトを買収したA社は、ネットショップの運営経験がなく、新規事業参入のためにウェブサイト売買という手段を利用した。この案件では、前オーナー会社から運営スタッフの転籍はできないという条件があった。このため運営はA社内で一番ネットに詳しい情報システム担当に一任することになった。