一定の座り心地実現
トヨタ紡織がグランクラスの座席開発に乗り出したのは2012年3月。JR東日本・西日本による開発コンペに提案したところから始まる。JRが打ち出したコンセプトは「大人の琴線に触れる『洗練さ』と心と体の『ゆとり・解放感』」。これに沿う形で検討を進めたが、コンペの実施を知ったのがその1カ月ほど前。短期間で企画書を練り上げなければならなかった。
そのかいもあって採用が決まるとトヨタ紡織は早速、設計や企画、デザイン、人間工学などから6人の精鋭を集めてプロジェクトチームを結成。これを母体に同年6月に「BR新規事業推進室」を立ち上げた。プロジェクトにかかわる社員は増え続け、最終的には常勤で30人程度に増強。それとともに態勢も強化、13年6月には「ACT推進部」に改称された。
グランクラスの座席開発について、第3シート設計部の稲留誠一郎主任は「(自動車用に比べ)シートピッチが広く取れ、車体内部の内寸も広いため、設計の自由度は高かった」と振り返る。根本の設計思想を「誰が座っても一定の座り心地になるようなシート」(稲留氏)に置いたが、シート表皮の風合いや操作性、身体へのフィット感などは自動車の経験をそのまま生かすことができた。