メディア王の異名をほしいままにしたルパート・マードック氏(中央)と2人の息子。ジェームズ氏(右)に21世紀フォックスの経営トップの座を譲る=2014年3月、米ビバリーヒルズ(AP)【拡大】
常識外れの資金はリーグを潤す。イタリア、スペインあるいはフランスに流出していた人気選手を英国内にとどめ、試合の質の向上はファン離れを防いだ。そして、中継放送の独占はBSBの加入件数を当初の150万件から3年間で500万件にまで増大させた。BSBが黒字に転じたのは言うまでもない。
マードック語録にこうある。
「大衆の心をつかむのはリアルタイムスポーツである」
「有料放送の加入者を増やすためには、その国に合わせたスポーツコンテンツを提供することが一番の近道である」
マードック氏とBSBが次に手に入れたのが欧州サッカー連盟(UEFA)主催のクラブチーム選手権チャンピオンズリーグの放送権。ここでも自らの事業とUEFAを潤しFIFAに波及、W杯の放送権が入札制に変わった。高騰要因である。
◆五輪にも影響
サッカーだけではない。ゴルフやテニス、クリケット、そしてラグビーへと長い腕は伸びていく。96年には8700万ポンドを出資、イングランドとウェールズ、フランスのチームによるラグビーのスーパーリーグ発足を主導した。
一方で、祖国で開催される2000年シドニー五輪の欧州放送権獲得に乗り出してもいる。
1995年、国際オリンピック委員会(IOC)に10億ドル(現在のレートで約1220億円)が提示されたという。96年アトランタ五輪の放送権料総額は約9億ドル、はるかに上回る。
IOCはしかし、3億5000万ドルを提示した欧州放送連合(EBU)を選んだ。過去の実績と質の高さの重視は“暴走”を押えたが、マードック氏の存在は後に影を落としていく。