ただ、同社の水谷徹社長は6月の会見で「ザ・モルツは家庭の冷蔵庫に入っている定番商品、プレミアム・モルツは仕事の昇進時などの“ハレの日”需要で相互に伸ばせる」と強調。実際、販売計画を見ると、年内にモルツ時代の1・4倍の200万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を見込むザ・モルツに対し、プレミアム・モルツも平成27年に前年比7%増(1900万ケース)を目指す。ザ・モルツへの移行が出ても、プレミアム・モルツを、商品群の拡充などで伸ばし、トータルでも上積みする戦略だ。
一方、ライバル各社は、マーケティング力に定評のあるサントリーのザ・モルツを警戒する。巧みな宣伝広告で需要を取り込まれる懸念があるからだ。スタンダードビールトップの「スーパードライ」を擁するアサヒビールは、季節限定のデザイン缶投入やCMと連動した売り場の展開などで対抗。「一番搾り」を主力とするキリンビールは、国内9工場ごとに味わいが異なる限定商品を12月に発売するなどして迎え撃つ。
ビール類市場で4割超を占めるスタンダードビールに、久しぶりの新ブランドが投入されることで競争激化は避けられない情勢だ。