近視眼的になりがちなのは人間の性だが、そんな私たちが将来の費用も見極めて最良の契約を選べる市場がなければ、優れた企業に消費需要が届かない。もし、契約にかかわるコストが消費者にわかりやすく説明されず十分理解されないために、限られた消費需要が、わかりにくい契約に埋もれた費用に流れると、誠実で効率的な事業者が十分な収入を得られないことになりかねない。もし、多くの事業者が消費者の意図しない支出で利益を得ると、経済全体に不利益が及ぶ。
消費市場の支払い手段を提供するクレジットカードなどの産業は世界中でこれからも大きく発展することが期待される。日本の消費市場が、優れた産業の未来を育てるものであってほしい。
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【プロフィル】谷みどり
たに・みどり 東大経卒。1979年通産省(現経済産業省)入省。経産省消費経済部長、官房審議官(消費者政策担当)を経て、2008年7月から現職。60歳。広島県出身。