□地域防災支援協会理事・小津光由
防災組織のリーダー像について、よく質問を受ける。私は「実戦場における軍隊の指揮官のような人物が望ましい」と答えている。関東大震災のような首都直下型地震が発生した際には、多くの死傷者の発生、重要インフラや家屋などの損壊、大火災、さらに原子力や燃料・化学企業関連施設の2次災害など、予期しえない大混乱の中で地域防災組織のリーダーは行動することになる。それは、戦場において決断し行動する軍隊、とりわけ陸上部隊の指揮官とよく似ている。
それでは、指揮官たる人物に要求される具体的な資質は何だろうか。旧陸軍の教範である「戦闘綱要」の冒頭「綱領」を、大災害の際の避難所運営リーダーに当てはめると、「リーダーは避難所の管理運営の中核となる人物であり、組織構成員の団結の核心である。組織構成員と常に苦楽を共にする気概を持ち、率先垂範して困難な事態を打開していくことにより他の仲間からの信頼と尊敬を得られる。考えているだけで実行しないことと、遅疑逡巡(しゅんじゅん)して結論を出さず、結果として不利益を招くようなことは決してしてはならない」となる。
一方、陸上自衛隊の幹部教育では「任務の完遂は、指揮官の史上最高の責任である」とし、「適時適切な決心及び的確な指揮は、任務完遂のための不可欠な要件」と教示している。災害発生時の避難所運営組織のリーダーは、避難所の管理運営という任務の重さを強く自覚するとともに、実行すべき事項を「適時に決定」し、その実行を「命ずる」ことが求められる。
陸自はまた「指揮の要訣」を定め、「まず指揮下部隊を確実に掌握し、次に明確な企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し、その任務達成に邁進(まいしん)させる」としている。