王子ホールディングスと三菱化学が開発したCNFの透明シート【拡大】
こうした中、とりわけ実用化に熱心なのが製紙会社だ。
日本製紙は、傘下の日本製紙クレシアからCNFのシートを挟み込んだ大人用紙おむつを1日に発売した。CNFに含ませた銀などの金属イオンが、不快な臭いを吸着する仕組みで、消臭機能を従来の3倍に高めた。CNFを使った商品の発売は世界で初めてだ。
販売開始に伴い、生産体制も強化。これまで山口県岩国市の工場に年間30トンの試験生産ラインはあったが、16年度に初の量産ラインを設け、生産能力を10倍程度に拡大する方向で検討している。
CNFは紙の原料である木材パルプから作れるため、関連ノウハウのある製紙会社は有利な立場にある。早くから磯貝教授や京大の矢野浩之教授と研究に取り組み、商品化で一番乗りを目指してきた同社は「まずは消臭機能を活用したが、今後は他の特長も生かしつつ、さまざまな分野に広めたい」と意欲をみせる。
王子ホールディングスは13年3月、CNFを使った透明なシートを三菱化学と共同開発した。高温状態でも縮みにくく、薄くて折り畳めるため、曲げられる次世代のディスプレーや太陽電池に使えるとして、16年以降に実用化する計画だ。さらに今年8月には、化粧品の原料を手がける日光ケミカルズと、CNFを使った新たな原料の開発で合意している。