ビール業界で世界最大のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)による同2位のSABミラー(英国)買収は、スケールが大きい。買収額が邦貨換算で約13兆円に上り、世界シェアは約3割になる。
日本のキリンホールディングス(HD)が世界シェア約2%、アサヒグループHDが同1%というのだから、彼我(ひが)の差は文字通り桁違いに大きい。しかしビールの世界では大手メーカーがますます巨大化する一方で、違う動きが新たに勢いを増している。
多様な味を売り物にするクラフトビールの台頭である。日本ではひと頃、地ビールブームがあった。欧米では以前から、小規模な醸造所が自慢のビールを造っていた。これらがベースにあるが、今注目されているクラフトビールの波は、似て非なるものである。
世界の大手メーカーはこれを無視できず、関心を強めている。日本でも大手各社が参入し始めている。例えばキリンHDのビール部門を担うキリンビールは子会社、スプリングバレーブルワリーを設けて今春、小型の醸造設備を併設したビアレストランを横浜と東京に開いた。
基本は苦みの強いタイプからラズベリー果汁を加えたフルーティーなものまで6種類あり、顧客の好む風味を加えたカスタマイズビールも提供できる。店内から醸造設備を眺めながら、量産する本業のビールとは違う味を楽しんでもらう狙いである。
スプリングバレーブルワリーの和田徹社長は「クラフトビールのブームが今、世界同時に起きています。その明確な定義はありません。実態がどんどん先行して、追いつけないのです」と語る。フランス、米国など世界のワイナリーを訪ね歩いているうちに、10年ほど前から「あそこは面白いから行ってみろ」と教えられて、クラフトビールの醸造所を深く知るようになったという。