東芝が9日公表した役員責任調査委員会の報告書には、厳しい責任追及をとどまらせるような記述があり、それを踏まえて同社が3億円という賠償請求額を決めたことがわかる。同社の収益の柱であり、室町正志社長の出身母体でもある半導体事業に関しては「証拠がない」として提訴の対象にはならないとしたが、調査期間は短く、責任追及の矛先は鈍い。東芝の現経営陣が過去と決別できるかに疑問も出そうだ。
報告書では、西田厚聡元社長ら5人の行為について、見過ごされるべきではないとしながらも、「いずれも個人的利益を図ったものでも、会社に対して特別に損害を加えようと画策したわけでもない」とかばうような記述が目立つ。「請求すべき損害額の算定等においてそのような事情を考慮する余地がある」としている。賠償請求額は3億円で、過去の事例からみて低い額に抑えられた。
半導体事業に関しては、「不適切な会計処理が行われていることを認識していた資料を確認するには至らなかった」として、役員の責任を「肯定できない」とした。